海外の報告書が指摘。日本は人身売買国家

日本における人身売買、国民の理解は深まっているか?

 2016年に米国務省の人身売買報告書(Trafficking in Persons Report, TIPレポート)では日本はG7(日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、カナダ)の中で唯一、「最低基準を満たしていない国」と指摘され波紋をよんだ。「そんなはずはない」と自分の環境に照らし合わせ、首を傾げる人も多かったかもしれない。しかし、その認識は人身売買という実態の把握がなされていないからである。2018年6月にようやく『日本政府は、人身取引撲滅のための最低基準を十分に満たしている』とされたが、国民の意識は追いついているのだろうか。
 日本において人身売買という言葉が無縁であると感じる方々がいる。だが「人身売買とは人身や行動範囲を強く拘束するような契約を、当人の了承をなしに他人間でかってに売買し、それが人道的に悪質であるもの」されている。そしてここでいう「当人の了承」とは、当人へ契約内容を説明する際に、悪質な条件を隠し相手を騙すという意も含まれている。一度、自国がどの様なことについて勧告されているのか、人身売買の報告書について目を通しておくのがいいだろう。

人身売買報告書(TIPレポート)内容

供給先・通過国としての日本の状況

 日本は、強制労働および性的搾取目的の人身取引被害者である男女、ならびに性的搾取目的の人身取引被害者である児童が送られる国であり、被害者の供給先・通過国である。
 主にアジアからの移住労働者は男女共に、日本政府による運営事業も含め、強制労働の環境にさらされる。北東アジア、東南アジア、南アジア、南米およびアフリカからの男性、女性および児童は、雇用または偽装結婚のために来日し、性的搾取目的の人身取引の被害にさらされる。日本で急速に増加する外国人留学生もまた、単純労働の分野において人身取引の被害者になる危険にさらされている。
 人身取引犯は、バー、クラブ、売春宿およびマッサージ店での強制売春のために外国人女性を日本へ入国させやすくしようと、外国人女性と日本人男性との偽装結婚を利用する。人身取引犯は、借金による束縛、暴力または強制送還の脅迫、恐喝、パスポートの取り上げ、その他の精神的な威圧手段を用い、被害者を強制労働や強制売春の状態にとどめる。大半の被害者は、生活費、医療費、その他の必要経費を雇用主に支払うよう要求され、債務奴隷とされやすい。売春宿の運営者は、被害者が借金を負っている期間を引き延ばす1つの手段として、素行が悪いとして恣意的に被害者に「罰金」を科すことがある。
報告によると、人身取引の被害者は、東アジアや北米等、日本を越えた送り先で搾取される前に、日本を経由する。
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 国際的な人身売買は三つに分類され、送出国、中継国、受入国となっており、日本はその中でも中継国、受入国として指摘をされているのだ。おそらく人身売買というキーワードが与える印象は、金銭で子供を買うという現場だろう。それはいわゆる送出国で行われるワンシーンに過ぎない。中継国、人身売買の被害者の通過を見過ごし、受入国は人身売買の被害者を知らずに働かせているということである。16年にその中継国、受入国として日本は最低基準を満たしていないと落第点をつけられたということだ。

性的搾取の状況

 日本人、特に、家出した十代の少女もまた、性的搾取目的の人身取引の被害にさらされる。「援助交際」やさまざまな形態の「JK」ビジネスが、性的搾取を目的とした日本人児童の人身取引を依然として助長している。高度に組織化された売春ネットワークが、地下鉄、若者のたまり場、学校、インターネット上などの公共の場で、被害を受けやすい日本人女性や少女を標的として、性的搾取目的の人身取引の被害者とする。
 こうした女性や少女は貧困状態で生活しているか、または認知障害がある場合が多い。モデルや芸能事務所に見せかけた団体の中には、詐欺的な募集手段を用いて、日本人男性、女性および未成年の少女に不明瞭な契約書に署名するよう強要し、その後、法的手段を取る、あるいは不名誉な写真を公表すると言って脅し、ポルノ映画への出演を強要する団体もある。
 入国を仲介する日本の民間業者は、日本人とフィリピン人との間に生まれた児童とそのフィリピン人の母親が日本に移住し、日本国籍を取得することを、多額の手数料を取って支援するが、これにより母親は多額の借金を負うことが多い。日本到着直後、借金を返済するため、性的搾取目的の人身取引の被害者となる母親や児童もいる。入国仲介業者に見せかけた組織犯罪集団もまた、仕事があると偽って、このような家族を日本に誘い、女性を歓楽街で強制労働に従事させる。日本人男性は依然として、タイやその他のアジアの国々における児童買春旅行への需要の源泉の一部である。
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 先に述べた契約内容を説明する際に悪質な条件を隠し相手を騙す行為について、ここでは不明瞭な契約書と記されており、これは人身売買、人身取引に当てはまるだろう。当面の救済措置として消費者機構日本が被害をなくすために契約書の統一や、契約時の対応可能行為の記入変更などAV人権倫理機構に意見するなどの動きは多少あったのだが、いまだにAV業界の自浄作用が機能していない現状にある。また日本の民間業者が日本国籍の取得を餌に、日本人とフィリピン人との間に生まれた児童とそのフィリピン人の母親に多額の借金を背負わせるという、強制的に性的搾取するという事案についても言及されている。

外国人技能実習生の状況

強制労働の事案は、政府が運営する技能実習制度において発生している。この制度は本来、外国人労働者の基本的な専門的技能を育成することを目的としていたが、事実上の臨時労働者事業となった。過剰な金銭徴収の慣行を抑制することを目指した新たな国際合意にもかかわらず、ビルマ、中国、カンボジア、ベトナムからの技能実習生は、漁業、建設業、製造業で職を得るために、最高で1万ドルという過剰な金銭、保証金または不明瞭な「手数料」を母国の送り出し機関に支払っている。多くの技能実習生は、技能実習制度の本来の目的に反して、技能の教授や育成が実施されない仕事に従事させられている。事前に合意した職務と一致しない仕事に就かされている技能実習生もいる。これらの労働者の中には、移動の自由を制限され、パスポートを没収され、強制送還の脅しを受け、その他の強制労働の状態に置かれた者もいた。技能実習生に「処罰合意」への署名を義務付け、労働契約を履行できない場合、何千ドルもの違約金を科す送り出し機関もあった。報告によると、契約を結んだ技能実習の仕事から逃れた実習生の中には、性的搾取目的の人身取引の被害者になる者もいる。

外国人技能実習生も問題は同じ

最近、何かと話題に上がる外国人技能実習生の処遇問題、労働搾取についても以前から指摘をされていた。不法就労の外国人が捕まり強制送還されたという報道がなされた時に、「不法就労だから強制送還は自業自得」「不法就労なんて犯罪者だ」という声が大半である。時には強制送還させられた者への目も当てられない誹謗中傷が飛び交うのが、人身売買への国民意識の現状でもあろう。強制送還された外国人は人身売買の被害者ではないだろうか、彼らにとって日本が人身売買の受入国ではないのか、という多面的に見る努力をしなければ、いつまでも国際社会から日本は人権後進国と揶揄され続けるだろう

人身売買報告書のように、海外から日本には人身売買があると指摘を受けた際、どの程度の拘束、労働搾取、性的搾取が人身売買に当たるのかという机上の論理で応じるのではなく、搾取されている被害者の実態の検証、法的保護による防止、救済をされるべきという事案として捉えるのが筋である。

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